鮒ずしの飯入れ

 手の皮膚の内側までも臭いと塩味の浸みこんだ私、毎年恒例にしている塩切の鮒に飯入れを行った。昨年、友人が近在の愛知川尻でつかんだ鮒を度重ねて持参してくれたものを一年塩しておいたもの。70匹位にたまっている。ご飯を急いで約4升炊く。その間に塩漬けの鮒をきれいに洗い水を切る。この段階で体に塩分と生臭さがしみ込んでいく。今晩の月例報告会、ちょっとやばいな…と何度も手を臭いでみる。

 朝ご飯の時、「今日は午前中空いているから、鮒ずし漬けるで…」と宣言。少しばかりのお手伝いを暗に要求したつもりなのだが、炊飯器のご飯をボールに移した後は、どこかにお出かけ…困るのは、漬けている最中にお客様が見えること、ご飯とお酒と汗…塩、… 格闘中は目も当てられない。おまけに曲げた腰が、「あ~ぁ、痛い・・・」

 お昼前、やれやれ…痛い腰を伸ばしても伸びきれない姿勢で後片付け、よたよたと水屋から出てくると、あ~ぁ暑かったとばかりに何か抱えてお帰りだ。頃合い見計らって帰ってきたな?…いやなもう一人の自分が呟いているのが聞こえる。鮒ずしを食べるのは大好きなくせに、漬けるのは習うどころか見ようともしない…

 先代は、浜の漁師さんに漬けてもらっていたが、かみさんと大将で二人がかりだった。専門家でも二人で漬けておられたのに、私は一人でか…とブツブツ不満が湧いてくる。漬けあがった桶を「重石も乗っている、ご苦労…」たった一言労いの主人。「まぁいいか、私の元気でいられる間。うまい、おいしい・・・」と食べてくれる家族がいるだけで・・・と胸を治める。「今度は私のつけた鮒ずし、持ってくるね…」水産試験場の藤原さんに話していたのに、…届けないままにお別れとなった。戴いた酸っぱい鮒ずし…懐かしく思い出しています。