おかがみさん 

 今、私は77歳。随分年を重ねてきた。コロナで授業日数の関係で冬休みが少し変化した学校もある。しかし、冬休みに入ったものの、あまり子供たちの声はしない。自粛自粛の我慢の冬休みだ。
私の冬休み、絵を描くことの大好きだった冬休みの思い出の絵は、決まって餅つきだった。かまどにもうもうと湯気が立っていて、庭にはねじり鉢巻きをしたお父さんが杵を振り上げている。すぐ下に、お母さんの白いエプロン、臼の中に手を入れて・・・もちつきの風景だった。冬休みが終わると決まってその絵は注目を集めていて誇りにしていた。

 その時期がちょうど今、我が家では明日12月30日の早朝、家族総出でこの餅つきを今も続けている。男連が杵を振り上げ、手合い水を打つのは私、この年になってまで恒例の餅つきに携われるのは、しんどいけど喜ぶべきことなのだろう。・・・
新米のもち米を5升漬け込んだ。大きな鏡モチは床の間と臼・・・そして、お仏壇に飾るふた飾りが一番薄。これだけで2升のもち米を使う。続いての臼は、水やにお荒神さん、仕事場に勉強机、神さん、地蔵さん、そして…ありとあらゆるところに小さなお鏡モチを飾って、お正月はそうするものだと思ってきた。

 時代は変わった。スーパーに行けば。ビニールにくるまれたピカピカのお飾りがいっぱい並んでいる。人々はそれを飾って、時には腐らないから毎年使うのよ…と言うお家もある。神に祈る。仏様に感謝する。変わり行くおかがみ事情をよそ眼に、今年も我が家の餅つきを行う。いつまで続けられるかわからないけれど…。ぺったんこの余韻は、懐かしい。