生け簀がほしい

 生け簀がほしい…。田植え時、暖かな雨の後には、多くの魚が登ってくる。今日も田植えに出ている若夫婦,田植えどころでないような大捕り物をしてきた。途中で仕事を放りだして、「どうしよう、どうしよう、鮒の大きなのが30匹くらいいる…」と電話してきた。

 曰く、鮒ずしの塩切にしようと頑張ったという。・・・が、いかにも大物過ぎる。細い排水溝を順番にガバガバと登ってくるのを網で待ち受けていただけだというが、おなか一杯の代きな子持ちブナ。もったいないけど、我が家の甲斐しょうでは、これだけ大きなものは手に負えない。

 親せきや近所の家に電話して、今晩のごちそうにどう? と持ち帰ってもらう。それでもまだまだたくさん…料理屋さんに電話して、生け簀にもらってもらえませんか?…と聞いた。ところが、もう、生け簀はつぶしてしまってない。…と言われる。残念。

 湖岸地帯の家々には、昭和40年代まではそぞれの家に生け簀があったのだが、今では皆目見当たらない。第一集落内に川が無くなった。井戸水もなくなった。田舎の風物も、守る手立てが無くなれば、どうしようもない。ならば、摑んでこなければいいいのだが、好奇心というものは抑えがたい。複雑な思いを持ちながら、今晩はフナの子つき刺身と煮つけ…美味しくいただこう。