こんにちわ

  私の父方、母方ともに叔母が長年一人暮らしを続けていた。体の元気な間は、畑仕事に精を出し、屋敷周りをせっせと片付けていたのだが… 足腰が弱ってからは、自分の身の回りに、必要なものを集め出した。手を伸ばせば、なんでもとれるように、次第に物が一つの居間に集まってきた。無理もないことである。

 いつ訪ねて行ってもテレビがかかっていた。別に見ているわけでない。常に誰かがいることを気付いてもらうためだったらしい。
そして、こんなことも言っていた。一人で寝ているとき、こねらがちょろっと顔をのぞかせる。・・・「おっ、お前そこにいるのか、お前も寂しかろ…」話しかけるときょとんとした顔を見せ、そそくさと物陰に隠れてしまった。」と・・・。

一人暮らしの方に、「こんにちわ、こんにちわ…」と声をかけるよう努めている。が、どのお宅でもテレビがかかっている。ピンポン鳴らしてもななかすぐにはお出会い出来ない。叔母たちの経験から、家の中でテレビを見ておられるのではないことが推測できる。
 今、足腰が痛むようになって、見るともなくテレビをつけることの多くなった私、一緒にテレビを見てくれる人がいるからこそ見ていられる…と感謝している。かかっているだけのテレビ、やっぱり寂しい。