水無月

 6月29日。水無月大祭の宵宮の日・・・これは私たちの地域に伝わる荒神山のお祭り、子供が小学にあがるまでに山頂の神社にお参りして、無病息災を祈るもの・・・大きな茅の輪をくぐって神妙に首を垂れる。そして、山を下りたところで、天満宮に並んだ夜店でいろいろのお土産を買ってもらうのが、唯一の楽しみであった。

 その頃の交通手段は徒歩、29日の午後から、家族が揃って山に登る。お参りをして降りる頃、夜店の明かりが何ともうれしかった。金魚や花火、そして綿菓子にりんご飴…懐かしい。真っ暗になった田んぼ道を疲れた足を引きずりながら帰る頃、蛍がふんわりふんわりと飛んでいた。

 その頃田んぼの作業は「他の草取り」の真最中、両親が早く作業を終えて帰ってくるのを首を長くして待っていた。そしててくてくと…
いまは車であっという間、風情を味わう暇なんてありはしない。今晩、その水無月祭りの宵宮だけれど、どうやら空模様が怪しい。荒神山にはわるいけど、今年の上りは少ないだろう。山頂から聞こえていた笛の音が、今年は聞こえてこない…、私は家で、お参りした子たちの土産を心待ちにすることとなる。今の私にはもう夜店をそぞろ歩く元気は全くない。でも、懐かしい思い出、この日を迎えると毎年思い出す。