大雨になるか?

 さみだれを 集めてはやし 最上川・・・私の生まれ育った旧い家の庭柱に、細長い花瓶がかかっていた。ササラ戸を拭きふき、隣の柱のこの花瓶を見ていた。
この頃の雨は、梅雨の前走り、田植え真っ最中。丁度役場に勤めだした頃で。朝仕事に田植えをに入ってから出勤が、どこも同じ。素足の水は冷たかったが、・・・

 だが、面白いことがあった。植えている側の小さな川で、「カバガバッ!」と荒い水音がする。「きたっ!」  もう田植えどころでなかった。小川のまかぼの中に、大きな鯉がうねっていた。銀色に光る鱗、パンパンに膨らんだお腹、、両手ですくい上げて田んぼにはね上げる。必ず2匹、思わぬ大漁だった。水の冷たさも雨に濡れた寒さもどこかに吹き飛んでいた。

 この時期、雨が降ると鯉が上がる。見慣れた風物詩だったが、基盤整備がされて川が無くなってしまうと、こんな楽しみもなくなってしまった。腰の痛さを我慢しながらの田植えも、エンジンの音に変わってしまうと風情はどこかへ…田んぼでのこびるや魚とりも…そして今はそれを語る人もいなくなって…

 環境こだわり農業が盛んに言われだして、「魚のゆりかご水田米」がクローズアップされだした。子供たちが田んぼへ稚魚を流したり、排水路に人工的に面戸を作ったり・・・。ナマズやタイワン、鮒、ガンゾ…どこにでもいた。畔に穴をあける嫌われ者のカニエビも…今では贅沢な食材になってしまっているが、田舎の本当の暮らしの楽しさ…いつか子供たちに話しておきたいと思う。

大雨の後には、田んぼの中で投網を打つ人も・・・でも、そうした話を信じられる環境でなくなっているのも正直なところ。「魚のゆりかご水田」 本来の姿はこれがゆりかご・・・とつぶやいている私です。